コントリビュートの流れとルール
コントリビュートの流れ
実際に AWS CDK にコントリビュートする際は、主に以下のフローで行います。
着手する issue を探したり、Pull Request を出す内容を決める
まずは本家リポジトリの issue から探してみましょう。
ラベルでカテゴリをフィルタリングすることもできます。p1
, p2
のような優先度ラベル(p1
は回避不可能なバグなどでメンテナーレビュー対象になり、p2
は回避可能なバグや機能追加要望などでまずはコミュニティレビュアーによるレビュー対象になるもの)や、AWS サービスごとのラベル、またeffort/small
, effort/medium
などの影響範囲によるラベルがあります。
また、good first issue
という、初めてコントリビュートする人におすすめのラベルもあるので、まずはこちらで絞り込んでみると良いかもしれません。
もしくはもともとコントリビュートしたい内容がある場合はそれでも構いません。しかし、すでにその内容と同じ issue や Pull Request が提出されている可能性もあるので、いったん既存の issue や Pull Request を探してみましょう。
該当する内容の issue や Pull Request が存在しない場合、issue を起票してから Pull Request を提出しても良し、そのまま issue を紐付けずに Pull Request を提出するのもありです。
もし提出しようと思っているコントリビュート内容が、果たして出して良いものかどうか不安がある場合、まずは issue を起票して、メンテナーに意見をもらうのも良いでしょう。
リポジトリのフォーク・クローン・ブランチのチェックアウト・ビルド
- フォークからビルドまでを参照
- フォーク・クローンは初回のコントリビュート時のみで OK
- 複数の Pull Request を管理するため、上記リンクの通り、Pull Request ごとにブランチを切っておきましょう
- ※upstream(aws-cdk 本家)の main ブランチに更新があった場合、自分のフォークしたリポジトリに反映しておく
- こちらは 2 回目以降のコントリビュートの際、またはフォークをしてから時間が経った場合に行います
- GitHub 上のフォークした自身のリポジトリで
Update branch
ボタンで更新し、その後ローカルの main ブランチでgit pull
をします- upstream のブランチへの追跡は git コマンドでも可能ですが省略
- ブランチを切る際は、更新後の main ブランチから切ると良いでしょう
- ブランチを切った後に本家の更新を反映するには、
git pull origin main
コマンドを使用します。(git fetch + merge でも可) - また 2 回目以降のコントリビュートの際は、ローカルでビルドした時から変更があることが多いため、再度ビルドをしておくと良いでしょう
- ブランチを切った後に本家の更新を反映するには、
ソースコードの変更
解決したい内容に従って、実際にソースコードを変更します。具体的なファイルは解決したい内容によって選択してください。
機能追加やバグ修正では、unit テストや integ テストのコードを追加して、変更が正しく動作することを確認します。
後述しますが、機能追加の Pull Request では README ファイルの更新も必要です。
再ビルド
ソースコードを変更した場合、後述する integration テストなどでテスト対象のモジュールを最新のコードとして実行するには再度ビルドをしておく必要があります。
なお、初回のクローン時に行ったlerna
によるビルドは様々な処理が実行されるため、時間がかかることがあります。
今回のソースコード変更で、もし TypeScript ファイルのみを変更した場合、tsc
コマンドによって TypeScript ファイルから javascript ファイルへのトランスパイルのみを行うことでビルド時間を削減する方法もあります。
ただしこれはあくまでトランスパイルのみをするためビルドとしては不十分なケースもあるので、何か不具合などが起きたらlerna
コマンドの方を実行するようにしましょう。
cd packages/aws-cdk-libyarn tsc
また、予めyarn watch
コマンドを実行しておくことで、コードの変更を検知して自動でビルドすることも可能ですので、こちらもオススメです(詳細はこちら)。
cd packages/aws-cdk-libyarn watch & # runs in the background
他にも、yarn build
コマンドでもビルドを行うことができます。
こちらのコマンドでもlerna
同様に様々な処理が走り、次項で説明する lint なども含めたビルドが行われます。ビルド時にまとめて lint も実行したい場合には便利です。
cd packages/aws-cdk-libyarn build
lint 実行
コードの文法・スタイルチェックを行うために、lint を実行できます。
こちらもyarn watch
などと同じく、モジュールのルートディレクトリ(packages/aws-cdk-lib
)で実行します。
cd packages/aws-cdk-libyarn lint
unit テスト(単体テスト)実行
機能追加やバグ修正などでは、unit テスト(単体テスト)を実行して、変更が正しく動作することを確認します。
既存の挙動に変更がないかどうか、またバグ修正の際に新たにテストを追加した場合も同じようにテストを実行して確認します。
cd packages/aws-cdk-libyarn test# またはテストファイル指定yarn test aws-sqs/test/sqs.test.ts
なお、テストが成功してもカバレッジが指定の値を超えていない場合エラーになりますが、テスト自体が PASS していれば Pull Request としては問題ありません。
integration テスト(統合テスト)実行
AWS CDK では、Pull Request の種類(詳細は後述)によってinteg-tests-alpha
モジュールによる integration テスト(統合テスト)を追加・変更する必要があります。ここでの integration テストとは、実際に AWS 環境に正しくデプロイできるかを確認するテストになります。
こちらでは integration テストファイル(TypeScript)をビルドし、javascript ファイルへトランスパイルされたinteg.xx.js
を実行することになります。(自分の変更したコンストラクト側、つまり aws-cdk-lib モジュール側のファイルも事前にビルドしておく必要があります。)
cd packages/@aws-cdk-testing/framework-integ# integration ファイルのビルド/トランスパイルをして、javascript ファイルを生成yarn tsc# 実際に integration テストを実行するyarn integ aws-sqs/test/integ.sqs.js # jsファイルが生成されていることを確認してから
こちらにより、実際に AWS CDK による AWS 環境へのデプロイを実行し、正しくデプロイできるかを確認することができます。
まずデプロイ前にinteg-tests-alpha
モジュール によって CloudFormation のテンプレートファイルがスナップショットファイルとして生成されます(同ディレクトリ内のinteg.sqs.js.snapshot
ディレクトリに保管)。
初めてそのテストのスナップショットを生成する場合、スナップショットのテンプレート生成とともに実際にデプロイが実行されます。すでに既存のスナップショットファイルがある場合で、そのスナップショットのテンプレートと差分がない場合、デプロイすらも実行されずに正常終了します。 もし既存のスナップショットから変更がある、つまり CloudFormation テンプレートに差分が生じた際は、デプロイが実行される前にテストコマンドがエラーで終了されます。
CloudFormation テンプレートに差分があるが、それが機能追加やバグ修正による想定内の変更である場合、--update-on-failed
オプションによって、エラーを抑制し、既存のスナップショットファイルを更新することができます。その際、まず元のスナップショットの状態でのデプロイが実行され、その後、更新後のスナップショットの状態でのデプロイがスタック更新として実行されます。これが成功すればコマンドは正常終了します。
yarn integ aws-sqs/test/integ.sqs.js --update-on-failed
もしそれらのテンプレートに、破壊的変更がある場合にもエラーが発生するため、この場合はコンストラクト側のコードを変更し、破壊的変更がないように修正する必要があります。
※破壊的変更: 既存のリソースが削除されたり置換されてしまうようなケース
また、integration テストでは実際に AWS 環境にデプロイした後、スタックを自動で削除する仕様になっていますが、もしデプロイ後に作成したリソースをマネージメントコンソールなどで確認したい場合、--no-clean
オプションを指定することで、スタックを自動削除しないようにすることができます。
yarn integ aws-sqs/test/integ.sqs.js --no-clean --update-on-failed
Pull Request 提出
ここまでで、実際のコンストラクトコードの変更、またテストの実行が成功したら、GitHub に Pull Request を提出します。
まず、ローカルのブランチで、変更したファイルを push します。
git add . # もしくは実際に変更したファイルを直接指定git commit -m "feat(sqs): add xxx property" # コミットメッセージは適宜変更git push origin workshop-guide-1 # ブランチ名は適宜変更
そして、フォークしたリポジトリをブラウザで開くとこのようなダイアログが出力されているので、このまま GitHub 上で Pull Request を提出します。
Pull Request のルール(後述)に沿ってタイトルや本文を記載し、Pull Request を提出します。
Pull Request ルール
Pull Request (PR) を提出する際のルールを以下に示します。
まず、PR タイトルですが、以下のように、種類(モジュール): 説明
のような記載にしてください。
また基本的には、全て小文字にしてください。(固有名詞やプロパティ名などには大文字を使っても構いません:TLS, MySQL, maxMessageSizeBytes
, etc…)
- feat(sqs): add
maxMessageSizeBytes
property forQueue
Conventional Commits
最初のfeat
部分には、今回の PR で変更する内容に沿って、Conventional Commits (feat, fix, chore, docs, test, etc…)に従って記載してください。
特に機能追加(feat)、バグ修正(fix)の場合は、以下のファイルを差分に含める必要があります。(含めない場合、AWS CDK リポジトリで自動発火する CI でエラーになります)
- feat
- unit テスト
- integration テスト + スナップショット
- README
- fix
- unit テスト
- integration テスト + スナップショット
integration テストに関して、自分の変更した内容に関連するテストファイルがすでにあればそれを変更し、なければ自分で新規テストファイルを作成して、テストを実行します。integration テストファイル自体とそのスナップショットのどちらにも差分が発生していないと CI エラーになります。
モジュール
feat(sqs)
の(sqs)
の部分には、変更した AWS サービスのモジュール名称を記載してください。
なお、以下のルールに注意してください。
aws-sqs
などの prefix のaws-
部分は省略する- alpha モジュールの場合の
-alpha
も省略するaws-apprunner-alpha
->apprunner
fix の場合の注意
バグ修正(fix)の場合、PR タイトルには、「このような変更をした」ではなく、「このようなバグがあった」という旨を記載してください。
- NG タイトル
- fix(sqs): use
xxx
instead ofyyy
- fix(sqs): use
- OK タイトル
- fix(sqs): failed to create queue when
xxx
is specified
- fix(sqs): failed to create queue when
補足
- 実際の PR では、PR 提出後に自動で CodeBuild による CI(ビルド・lint・テスト・etc…) が走ります
- ワークショップでは PR 提出後の CI を提供していません
- feat や fix では unit テスト、integration テスト、README(feat のみ) などの変更をしないと CodeBuild CI がエラーになりますが、変更内容に対してそれらは不要であると主張したい場合(たとえば unit テストのみで変更内容がカバーできる場合など)は、Pull Request のコメントで以下のようなコメントをすると、メンテナーが不要と判断した場合にのみ、差分に含めなくても良くなります
Exemption Request: 理由
- ただし、なるべくこれは行わず、PR ルールに沿って変更を行うようにしましょう
コントリビュートガイド・デザインガイド
コントリビュートをする際、今回のワークショップで説明できなかった注意点も多々あります。以下の公式リンクを参照してください。
また、k.goto が個人で公開している資料にも注意点・実装 TIPS などが公開されているため、こちらも良ければご覧下さい。